今回のトピックは「しっかりとした大人の自我を持つ」についてです。
あなたは、交流分析、という心理学の一分野をご存じですか?
交流分析とは、アメリカの精神科医であったエリック・バーン博士によって、精神分析を土台にし、人間性心理学を取り入れて作られた、人の心と行動を快適にする心理学のことです。
この中で、エリック・バーン博士は、人間には、5つの自我状態があると、唱えました。その5つをこれから説明しますね。
1.CP(Critical Parent~批評的な親~)・・・世の中のルールや道徳観念、規則などを守ろうとする部分で、主に親からのしつけにより子どもに伝わる部分です。あなたの中にも、「こうあるべき」とか「こうすべき」とかいう心があるはずです。この部分があまり行き過ぎると、厳し過ぎてしまうことになります。
2.NP(Nurturing Parent~見守る親~)・・・受容、共感、面倒を見るというお母さん的な部分とでも言えるのでしょうか。優しい部分ですね。これがあまり強すぎると、「おせっかい」だとか「過干渉」だとか言われることになってしまいます。
3.A(Adult~大人~)・・・客観的で、冷静、論理的な部分です。情報を集め、分析して判断します。普段、交渉などで使う部分は、この部分となります。
4.FC(Free Child~自由な子ども~)・・・自由奔放、天真爛漫、感性が豊かな、自由な子どもの部分を指します。
5.AC(Adapted child~従順な子ども~)・・・周りとの協調性を考え、親の言うことに従ってきたゆえに出る部分のことを言います。「順応する子ども」「適応する子ども」という意味です。
人が生きていくためには、しっかりとしたA、つまりAdult(大人)の部分が十分に育っている必要がある、と言っています。そうすることで、自分の中の「FC」や「AC」のチャイルド(子ども)を適切にあやしていけるといいます。
それでは、しっかりとしたA、つまりAdult(大人)が育つためには、どうしたらよいのでしょうか?
私が学んだところでは、この自我状態を持つためには、大人(P)の自分が何を言おうが、子ども(C)の自分が何を言おうが、しっかりとした中立的、かつ客観的な、物事を一歩置いて考えらえるような状況を常日頃から作っておく、ということです。
アダルト(A)の大人の自我は、自分の中の親の自我の言うことを統制し、子どもの自我の言うことを抑制します。こうすることにより、バランスのとれた生活ができるのです。
例えば、友人と食事に行く、ということになったとします。あなたは、イタリアンが食べたい気分だったとします。ところが友人は、和食が食べたい、と言います。
P(親)のあなたは、「いつも私があなたの好みを優先しているのだから、今回はあなたが私の好みを優先すべきよ。」(CP)といった声が聞こえてくるかもしれません。
また、「そうよね。あなたは疲れているから、きっとお腹に優しい和食が良いのよね。」(NP)などと思うかもしれません。
はたまた、子ども(C)のあなたが顔を出し、「やだやだ~!今日は絶対イタリアンがいい!」(FC)とか、「はい、分かりました。あなたがそう言うのなら、あなたの言葉に従います」(AC)と言った声も聞こえるかもしれません。
ですが、最後に、この声全てを統制するのが、A(大人)の自我です。
「分かったわ。今日は、私はイタリアンを食べたいけど、あなたは和食がいいのね。今日はあなたの好みに合わせるけど、次回は私のチョイスにしてね。」と交渉するかもしれませんし、「そうしたら、イタリアンも和食も食べられそうな、創作料理のレストランに行かない?」などと誘うかもしれません。
P(親)やC(子ども)の声にコントロールされていたら、現実的な判断ができなくなるのです。そこで活躍するのが、A(大人)の自我なのです。
この大人(A)と子ども(C)、そして親(P)の3つの自我が自分の中にバランスよく持つことができたとき、自分の欲求を殺さず、なおかつ周りの意見も尊重して、「自分OK!相手OK!」となれる条件となってきます。
大人(A)の自我は、自身の言動をコントロールするのに、大変重要な役割を担います。この自我がしっかりとしていないと、仕事でも人間関係でもうまくいかなくなることが多いですよね。なぜって、客観性が足りないがために、独りよがりになったり、はたまた相手に合わせ過ぎたりしてしまうのですから。
また、カウンセリングでも、親(P)、特に批評的な親がよくクライアントの口から出てきます。自分を叱咤する声です。また、従順な子どもの声も聞こえてきます。親の言うことが正しく、それに従います、というような。
ですが、最後、成長するのを助けるのは、大人(A)の部分が大きい気がしています。大人(A)の自我は、自分を冷静に見られ、客観的な立ち位置に立って、自分の現状を把握することができるからです。
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