
毒親と精神疾患の関係|親の心の問題は子どもの自己肯定感に影響する?
「毒親に育てられたけれど、親は精神疾患だったのでしょうか?」
「母親は自己愛性パーソナリティ障害だったのでは?」
「どうして、あんなに私を否定したのだろう?」
毒親に育てられた方からは、親の言動について、このような疑問を聞くことがあります。
親から否定されたり、過度に干渉されたり、いつも親の機嫌を気にしながら育ったりすると、
「なぜ、あの人はあんなことをしたのだろう?」
と、その理由を知りたくなるのは自然なことです。
そして、「もしかしたら親には精神疾患があったのでは?」と考えることもあるでしょう。
では、毒親と精神疾患には、どのような関係があるのでしょうか?
毒親=精神疾患、ではありません
まず大切なのは、
「毒親だから精神疾患がある」とは限らない
ということです。
そもそも「毒親」は医学的な診断名ではありません。
子どもにとって苦痛となるような、過度な否定、支配、干渉、無視、暴言、過剰な期待など、さまざまな親子関係を表す言葉として使われています。
一方、精神疾患やパーソナリティ障害は、専門家が症状や経過などを総合的に判断して診断するものです。
そのため、
「親の言動がひどかったから、この精神疾患だったはず」
と、子どもの立場から診断することはできません。
また、精神疾患がある人が必ず毒親になるわけでもありません。
ここは、しっかり分けて考える必要があります。
親に精神疾患があると、子どもにも影響することがある
一方で、親の精神的な問題と子どもの心の健康には、一定の関連があることが研究で分かっています。
親にうつ病、不安症、双極症、精神病性障害などの精神疾患がある場合、子どもは精神的な問題を抱えるリスクが高くなることがあります。
ただし、これは「親が精神疾患なら、子どもも精神疾患になる」という意味ではありません。
精神疾患には、遺伝的な要因だけではなく、
- 家庭の環境
- 親子関係
- 慢性的なストレス
- 養育のあり方
- 経済的・社会的な環境
- 周囲からの支援
- 子ども自身の気質や経験
など、さまざまな要因が関係しています。
つまり、親の精神疾患だけで子どもの将来が決まるわけではないのです。
「親が病気だったから仕方ない」と思わなくていい
ここで、とても大切なことがあります。
仮に親に精神疾患があったとしても、
あなたが傷ついたという事実はなくなりません。
親には親の苦しみがあった。
親自身も、つらい家庭環境で育っていたのかもしれない。
精神的な問題を抱えていたのかもしれない。
それは事実として理解できるかもしれません。
でも、
「親も大変だったのだから、私が傷ついたことは我慢しなければいけない」
とは限りません。
親の事情と、あなたの傷は別のものです。
「親には親の事情があった」
と理解しながら、
「それでも私はつらかった」
と認めてもいいのです。
毒親との関係が自己肯定感に影響することもある
子どもは、親との日々の関わりを通して、
「私はどんな人間なのか」
「人から愛されるためには、どうしなければならないのか」
という感覚を少しずつ身につけていきます。
たとえば、
「あなたは何をやってもダメ」
「そんなこともできないの?」
「もっと頑張りなさい」
「あなたのためを思って言っている」
「そんなことで傷つくなんて弱い」
など、否定的な言葉を繰り返し受けていると、
「私はダメな人間なんだ」
「頑張らないと認めてもらえない」
「人を怒らせてはいけない」
「自分の気持ちより、人の気持ちを優先しなければいけない」
と考えるようになることがあります。
そして大人になってからも、
- 自分に自信が持てない
- 人から嫌われるのが怖い
- 断ることが苦手
- 人の顔色をいつも気にする
- 失敗すると自分を責める
- 自分の気持ちが分からない
- 人間関係で我慢しすぎる
- 「私なんて」と考えてしまう
といった生きづらさにつながることがあります。
もちろん、こうした悩みの原因は家庭環境だけではありません。
一人ひとりに、さまざまな要因があります。
親の病名を探すことだけが答えではない
毒親に育てられた方の中には、
「親は自己愛性パーソナリティ障害だったのでは?」
「境界性パーソナリティ障害だったのでは?」
「発達障害だったのでは?」
と、親の病名を一生懸命調べる方もいます。
それによって過去の出来事を整理できることもあります。
「あの言動には、こういう背景があったのかもしれない」
と理解することで、気持ちが少し楽になる場合もあります。
でも、病名を探し続けることが、必ずしも心の回復につながるとは限りません。
大切なのは、
「親が何の病気だったのか」だけではなく、
「私は何をされて傷ついたのか」
「本当は親に何をしてほしかったのか」
「その経験によって、私はどんな考え方を身につけたのか」
「今の私は、どんなことで苦しくなっているのか」
を見ていくことです。
親を理解することと、親を許すことは違います
「親も苦しかったのかもしれない」
そう理解できるようになることがあります。
でも、
親を理解することと、親を許すことは同じではありません。
そして、
親の事情を理解することと、自分の傷をなかったことにすることも違います。
「親にも事情があった」
「でも、私は傷ついた」
その二つは、同時に存在していいのです。
無理に親を許そうとしなくてもいい。
無理に親と仲良くし直さなくてもいい。
まずは、自分の気持ちを認めることから始めてもいいのです。
大人になってからでも「育ち直し」はできる
子どもの頃に十分に受け取れなかった安心感や自己肯定感を、大人になってから少しずつ育て直していくことはできます。
それが「育ち直し」という考え方です。
たとえば、
「私は私のままでいい」
「失敗しても、私の価値がなくなるわけではない」
「人の期待にすべて応えなくてもいい」
「嫌なことは嫌と言っていい」
「自分の気持ちを大切にしていい」
といった感覚を、少しずつ取り戻していきます。
過去の親子関係を変えることはできません。
でも、
過去の経験から作られた「私はこういう人間だ」という思い込みを、これから変えていくことはできます。
「親のせいにしてはいけない」と思っていませんか?
もしあなたが、
「もう大人なのだから、昔のことを引きずってはいけない」
「親のせいにしてはいけない」
「いつまでも傷ついている自分が弱い」
と思っているなら、少し立ち止まってみてください。
子どもの頃に身につけた考え方や、人との関わり方は、大人になってからも無意識に残ることがあります。
だから、今も生きづらさを感じるからといって、あなたが弱いわけではありません。
その環境の中で生きていくために、身につけざるを得なかった考え方や行動パターンが、今のあなたを苦しめていることもあります。
大切なのは、自分を責めることではありません。
「あの頃の私は、そうするしかなかった」
と、過去の自分に少しずつ理解を向けていくことです。
そして今度は、大人になった自分が、自分自身の味方になっていく。
そこから、自己肯定感を育て直すことが始まります。
まとめ|毒親の問題から、自分自身の人生へ
毒親と精神疾患には、必ずしも直接的な関係があるわけではありません。
また、親の言動だけから精神疾患やパーソナリティ障害を判断することもできません。
一方で、親の精神的な問題や不安定な家庭環境が、子どもの心の発達や、その後の生きづらさに影響することはあります。
だからこそ、
「親は何の病気だったのだろう?」
という問いだけではなく、
「私は、あの環境の中でどんな思いを抱えて生きてきたのだろう?」
という問いにも目を向けてほしいと思います。
親を変えることはできません。
過去をやり直すこともできません。
でも、これからの自分との関係は、少しずつ変えていくことができます。
「私は私でいい」
そう思える自分を、これから育てていく。
それが、自己肯定感を取り戻すための「育ち直し」の一歩になるのです。
この記事を書いた人
斉藤瑞穂|自己肯定感を上げる専門カウンセラー
24年以上、5,000人以上のカウンセリング経験をもとに、自己肯定感、人間関係、親子関係、生きづらさなどの相談に向き合っています。
「親との関係が今も苦しい」
「自分に自信が持てない」
「人の顔色ばかり気にしてしまう」
「もっと自分らしく生きたい」
そんな方が、自分自身を大切にしながら生きていけるよう、カウンセリングを行っています。














